CHI2007 二日目

Bill Buxton の新著

"Sketching Use Experiences". Bill Buxton ご本人が書店ブースにいたのですかさず購入&サインのおねだり。

CHI Madness


昨年より、朝のプレナリートークの直後に、その日にやる全発表を30秒ずつ紹介していく CHI Madness というのをやっている。どの発表を聴きにいくべきかがわかって便利なのだが、2年目ともなると「どうやって受けをとって来てもらえるか」という方向に走り出す人が段々増えてきている。掛け合い漫才風にやってみたり、同じセッションの論文で共闘してまとめて演出してみたり。写真のはデカPDA(どうやって飛行機に乗せたんだろう?)を使っている例。来年はコスプレが出現するのはほぼ確実と見た。

Social Jogging


"Jogging at a Distance" これは個人的趣味 :-P 。
ジョギングは友達どうしで走ると楽しいが、なかなか都合がつかないし、ペースが合わないとフラストレーションがたまる。というので携帯電話で遠隔の人と会話しながら走ったり、nike+ipodを使って速度を検出して、遠隔の相手を追い越したり追い越されたりを3D音響で表現したり、というシステム。現状は写真のような装備だが、iPodや携帯の機能として含まれれば結構ブレイクするのではと思った。*1 ちなみに米語では"jogging" というと非常にカジュアルに走る意味になるので、まじめに走っている人はjogger といわれるのを嫌うと聞いた(I'm a serious runner, not a jogger.)。

Tangibility


Senspecuta. 3D モデリングをtangibleでやりたいということみたいだが、現状のは単に点滅するLEDモジュールを結合するトイのようで、綺麗だけどその先はどうなのか?という印象を持つ。モデリングに特化するならもっと効率的なソリューションがあるという感じを払拭できない。


"Mechanical Constraints as Computational Constraints"
SenseTable + Actuated Workbench で、テーブル上のパックをセンスして動かすプラットフォームを使いながら、テーブル上の自在定規などを「物理制約」として利用する。たとえばこのパックはある領域には入れない、というのを、その境に自在定規を置いて制約する。応用例としては電話局のタワーをどう配置するか、というシミュレーションと組み合わせていた。
今回のCHIで最も力作な発表*2だと思うが、見ていて思ったのは、物理的な制約で表現できない制約条件は一杯あるのではないか、と。たとえば「このビルの上にはタワーをおけるが、このビルはだめ」とか。質問でも「ペンで制約条件を描けるのでもいいのじゃないか」とか「タンジブルにしなければ垂直のディスプレイでできるのでワークスペースが有効に使えるのではないか」などの意見が出てきた。

James Patten の以前のシステム(music Table)は、音楽の操作が目的なのでリアルタイムに複数の物理パックを動かすことに意義や有効性を感じたが、今回のはGUIでやる場合もTangibleでやる場合もそれぞれ利点・欠点があって、がんばってハードを作りこんでいる(上の電磁石の塊!)割にはあまり説得されなかった。
その辺を石井さんに確認すると、「これはフィジカルなランゲージの可能性を探索しているので、電話局のアプリケーションに特化すると別のソリューションがあるかも知れないが、研究としてはアプリの解決を目指しているのではない」という意見だった。タンジブル研究全般に言えるのだが、トータルなお話としては非常にビジョンを感じるが、個々のシステムに落とし込んでいくと現状の技術レベルとのミスマッチを感じてしまって、「これって別にGUIでやっても・やったほうがいいんじゃ」みたいなところがある。とくにテーブルトップ系は。*3

もうちょっと踏み込んで、「たとえばファッション業界ではパリコレに出す服というのは実際に街で着るというよりは方向性を示すものだと思うが、そういう感じか」と聞いたら「まさにそう」だと。ようするにオートクチュールなんだ、と。ただファッション業界では同じデザイナーが同時にプレタポルテもやっている気もするが、それに相当するのは何なのだろう...などと考えさせられた発表だった。

*1:Adidasは携帯GPSを使ったサービスをすでに行っている

*2:最近のCHIでは、こういったシステムをちゃんと作り上げて世に問う、みたいな発表が減少傾向で寂しいのだ

*3:補足しておくと、単に技術レベルとのミスマッチだけではなく、tangibilityを獲得するために失った(あえた捨てた?)コンピュータの優れたフィーチャー、たとえばスケーラビリティや柔軟性(万能性)との特質がいまだきちんと整理されていないのではないだろうか?