Skin: フィリップスデザイン[プローブ]プロジェクト展

http://www.axisinc.co.jp/news/2008/20080107.html

先週の金曜日にAXISで開催されたフィリップスデザインのプロジェクト展に参加してきた。土曜からの一般公開に先だってのシンポジウム形式で、フィリップス側から ステファノ・マルツァーノ氏(Philips Design CEO)らによるプレゼンテーションと、それを受けて山中俊治氏、デザインジャーナリストの藤崎圭一郎氏を加えてのパネルという構成だった。展示物は

  • 持続可能住宅
  • エレクトロニック・タトゥー
  • センシングジュエリー
  • エモーショナルセンサー
  • スキン:ドレス

など(すべてモックあるいはビデオによるイメージであり、実動するものではない)。

とりあえず私の感想としてはちょっと肩透かしというのが否定できないところだった。まず「サステイナビリティー」にデザイン会社が真剣に取り組むというのは大変素晴らしいことだという前提の上で、でもさすがに去年から聞きすぎた単語なので、もう少し「フィリップスならどうサスティナビリティーに切り込んでいけるのか」という提言が明確であったほうがよかったのではないか。たとえばフィリップスは世界有数の医療機器メーカーでもあるので、少子高齢化社会についての取り組みとデザインの関係についてもっと踏み込んでいったら話に深みが出たのに、という印象を拭えない。表層的な「エコっぽい感じ」のデザインの話になってしまうとあまりにももったいない。一方、建築物の表面が「皮膚」や「膜」(たとえば細胞膜のような)だとみなして、環境を調整するというイメージには魅力を感じる。実は最近書いた"Organic User Interface"に関する論文*1でもそういったSkin/Membraneのコンセプトに触れているところがある。またデザインの前提となるテクノロジーが、機械的・電子的なものから生物的・有機的なものにシフトしていくであろうという認識にも同意する。

考えてみると環境的な発想に立ったデザインというのも歴史が古く、バックミンスター・フラーやヴィクター・パパネックなどの仕事(もう30年以上も前)を調べなおしてみると、その先進性には改めて感銘を受ける。たとえばパパネックの著書では、自己融解性のプラスチックに養分を染ませた物体をばらまいて砂漠を緑化する実験などが紹介されているが、これこそ今で言うサステイナビリティーのためのデザインという感じがする。さらに遡れば、そもそもレオナルド・ダ・ヴィンチからして灌漑システムのデザインなどをやっている。そういう先人の業績を踏まえて、で2008年には何をすべきなのか、ということだろう(→自分への課題)。


『生きのびるためのデザイン』とは変なタイトルだが、原題はそのものすばり"Design for the Real World -- Human Ecology and Social Change"である。

*1:CACM掲載予定