エノテカに行ってみるテスト

エノテカといっても銀座のではないです。CHI2008でフィレンツェに滞在しているので、どうせ一生に一回だと思ってエノテカ・ピンキオーリ (Enoteca Pinchiorri)に出撃してみた。言わずと知れたイタリアを代表するリストランテです(ミシュラン三つ星)。当日の昼に試しに電話してみたら予約できてしまったので行かざるを得ないことになったというのが実情です。どうしようネクタイもないし、という状態で行ってきた。

で、感想からいうとこれはもうパラダイスです。たぶん料理そのものだけで言えば、日本にあるトップレベルのイタリア料理店でも出せるかもしれない。が全体的な「おもてなし」は絶対無理だと思う。(エノテカ銀座店に行ったことがないので銀座と比べてどうかはわからない)。

以下その顛末です:

  • タクシーでつくと門のところに人が立って待っている。
  • 店に入ってから(正確には建物の入り口から)テーブルにつくまで大量の店員が立って待ち構えている。満面の笑みで。少なくとも10回はボナセーラと挨拶した。
  • すわると「これは小さなプレゼントです」と白ワインをグラスに入れてくれる。
  • ちなみにテーブルについてからは自動的に英語で話してくる。メニューも英語のものを(とくにそう言わないでも)渡してくる。
  • 水もどうしますかと聞かれるので「じゃガス入りで」と言うと、「この中から選んで下さい」と「水リスト」を渡される。このリストがすでに普通のレストランのワインリストぐらい分厚い。
  • 料理はコース(デギュスタシオン)もあるがアラカルトも当然ある。「前菜/パスタ/セコンドってとるのが普通ですか?」と聞くと、「パスタ/主菜で(分量的には)いいいんじゃないでしょうか」ということなので、それぞれ(2名で)パスタと主菜を選んでみた。
  • この時点ですでにアミューズが一品出ている。アミューズは瓶に緑色のペーストが入っていてそれとスナックを組み合わせているもので、明らかにel Bulliの影響を受けていると思う。
  • で料理が決まるとワインなのだが、「バイザグラスもありますよ」といって見せてもらったページには、オルネライヤとかサッシカイヤとかがグラスで選べる信じられないようなリストが。最低5杯で1セットで、それぞれあるグループから一品を選択する。
  • このバイザグラスもランクがあって、最低ランクですでにサッシカイヤがリスティングされている。上のランクだとCase Basseとかもう幻のようなワインがあって目がちかちかしてくる。
  • ただしこのバイザグラスは、最低2名で同じ銘柄を頼まなければならないらしい。相方が飲めないので「一人だったらどうすればいいのか」と聞くと、「選択は自由にならないが、そのカテゴリーから5杯持ってきてあげる」と言われるので、それにしてしまう。(バイザグラスの一番安いカテゴリー)。
  • ワインリスト自体は、もちろんイタリアの銘柄も多いのだが、他国(フランス、カリフォルニア, etc.)もまんべんなく取り揃えてある感じ。さすが"エノテカ"である。
  • この辺りでもう1時間ぐらい経過。
  • 上で頼んだワイン以外に、「これもプレゼントです」と赤ワインをグラスに入れてくれる。あまり飲まない人ならこのおまけワインだけで間に合うかもしれない。
  • パスタが来る前にさらにアミューズ(かなりしっかりした前菜風のもの)が二皿。すでに結構おなかが。
  • 突然小さなテーブルを持ってきて「ブルスケッタはどうでしょう」と勧めてくれるが、あとの料理を考えて遠慮しておく。
  • ブルスケッタとは別にパンも 4−5種類ぐらい。そういえばほとんどパンを食べる余裕がなかった。
  • ようやくワインのグラスと料理がやってくる。1時間半ぐらい経過?
  • もう結構よっぱらっている。
  • 料理そのものは、圧倒的に量が多いということもなく、伝統的なイタリア料理というよりは相当洗練されている。
  • ただここまで書いたようにアラカルトで頼んだ以外にいろいろと食べるものが多いので全体としてはかなりな量になる。
  • ちなみにこういう向こうが勝手に出してくれるものは一切追加料金がかからない(当たり前のようだが、日本ではだまって水をついでしっかりミネラルウォーター代として会計に入れてくるという悪質なところもあるらしいので)。
  • ワインも5杯が出そろってテーブルがすごいことに。
  • この辺でもう完全に酔っぱらっていてどれがどの銘柄のワインかがわからなくなっている。
  • 飲んだのは上のような理由で向こうが選択したものだが、それでもSolaia, Redigaffi, Luce, Testamatta などとてつもない銘柄が。
  • 多分銘柄を取り違えていないとしてだが、Redigaffiは抜群な感じがした。私が今まで飲んだtoscanaワインの中ではこれが最高だと思う。
  • チーズと言われたがもはや限界。見送る。
  • デザートもイタリアの伝統的なものではなく、実験的な感じ。私が頼んだのはいろんな材料がジグソーパズルのように型抜きされて組合わさっている。これもel Bulliの影響を感じる。
  • デザートのあともフルーツ(これもジュースがフラスコ状の容器に入っていてストローで吸わせるなど実験的)やらクリーム状のチーズやらなぞの赤い液体やら4種類ぐらいいろいろ出してくれる。
  • ようやくコーヒー(エスプレッソ)にいきつく。
  • そのあとチョコレートがトレイに一杯でてくるが、一つつまむのがやっと。
  • 11時ぐらいに店を出る。もうへとへと。体が重い。
  • お土産(笑)として、注文したメニュー/ワインを印刷したもの、ガレット、そして世界レストランガイドのような本、をもらった。最後の本(小型だがハードカバーの結構立派なもの)は他の三つ星店でももらったことがあるがレストラン連盟みたいなのがあるのだろうか?


あまり予備知識なしに行ったのだが、料理は予想に反して、いわゆる伝統的イタリア料理ではなく、斬新な工夫を随所にこらしているものだった。老舗のイメージとはかなり違った料理だった。こうしないと三つ星からは転落してしまうのかなと思ったりした。最近のミシュランでは伝統を守った超豪華レストラン、というだけでは容赦なく三つ星の座から落とされてしまう(それがいいか悪いかはわからないが)。実際ここも三つ星→二つ星→三つ星という経歴を持つ。

値段は野暮になるので書きませんがもちろん安くはないです。自腹の食事の最高額かも知れない。でもこれだけのトータルエクスペリエンス代としては納得できる(ということにしておく。ユーロ建てだと実感がわかないということもある)。上にも書いたが、注文した料理/ワイン以外の追加料金は一切ない。サービス料もない。アミューズ代・パン代も計上されない。金額表示はもちろん内税。なので、メニューをみたときはたしかに「うわーすごい値段」と思うのだが、そこで覚悟を決めてしまえば、最後の会計のときは「意外に安かった」とすら思えてくる。日本のレストランはいろいろ細かく追加されているので、最後に「え、こんなになっちゃうの」ということになる。というより勝手に出してくるアミューズなどに対しても料金を取ったりする日本のシステムはあまり明朗会計とは言えないのではないか。

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ついでに書いておくと、フィレンツェはもう適当に店に入っても何でも美味しいです。このへんがパリとちがうところか(パリは適当に店に入るとたいていがっかりすることになる)。