五嶋みどり+エッシェンバッハ+フィラデルフィア管弦楽団

サントリーホールの土曜の回に行ってきた。午後2時開演。夜の公演とちがって、マチネは何となく雰囲気がゆったりしていていい気分。土曜だし、直前まで仕事でギリギリ駆け込む、という人も少ないのだろう。演目は

チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲(vn 五嶋みどり
ショスタコーヴィッチ交響曲第5番『革命』

の2曲。みどりのソロは素晴らしいの一言なのだが、オーケストラがそれに見合わなくて残念だった。いちおう、ここは米国五大オーケストラの一つで、かつては(今でも?)フィラデルフィアサウンドとして有名だったはずなのだが、今回聞いた感じでは全体にザワザワと騒がしいわりに、ここぞというところでそんなに迫力がでない。金管はまだしも弦に厚みがない。木管もあまり音量コントロールに気を遣っていない(ように聞こえた)。たとえばフルートソロは曲の場面におかまいなしに、常にmfで出ると決めているみたいだ...

ショスタコーヴィッチも同じ傾向で、音が派手なわりに劇的な感じがしない。拍手もチャイコフスキーのときと比べて随分低調だったような気がする。チャイコフスキーのときの拍手は主に五嶋みどりの演奏に対してだったのだろう。

アンコールはソリストはなし(みどりに対する拍手が全然なりやまないのにアンコールをしなかったので、たぶん最初からそう決めてあったのだろう)。ショスタコーヴィッチの後でワーグナーのローエングリーンをやった。オーケストラとしては結局このアンコールが一番よかった。

ついでに同じ曲目のお薦めCDを書いておくと、チャイコフスキー五嶋みどりアバドベルリンフィル。みどりのソロはワンフレーズたりとも聞き逃せない。これはライブ録音なのだが、たぶん生で一回聞いただけではすべて消化しきれないぐらいの情報量だと思う。

ショスタコーヴィッチは定番すぎだがムラヴィンスキーレニングラードフィル。今回のフィラデルフィアのほぼ正反対の演奏で、騒がしさはまったくなく、怖いぐらいの精密さとすさまじい迫力とが同居している。