TwitterとWorldbeam

TwitterNHKで紹介されたみたいだ(私は見ていないのだけれど)。Twitterを使っていない人にTwitterを紹介することはとても難しいような気がする。たとえば「それはmixiとはどうちがうんですか」などと聞かれた場合。スカっとした答えが見つからない。Twitterを使っている人どうしでもよくわからない。番組ではどうやって説明したのだろう。

私が最初にtwitterを知ったときにまず思ったのが、これはWorldbeam(ワールドビーム)の実装第一号なのではないか、ということだった。もっと正確にいうと、ラボのミーティングでworldbeamについて議論していたら、「それによく似た概念のサービスがはじまったよ」と教えてもらったのがtwitterだった。

Worldbeamはあまり知られていないかもしれないが、Tuplespace, LifestreamsやMirrorworldsで有名なDavid Gelernterが描くインターネットの未来像である。

Gelernterによれば、未来のサイバースペースは現状のweb中心の世界から、"beam"と呼ばれる情報の集まりへと変貌する。beamは時間の概念をもつ情報の流れであり、利用者は任意のbeamに"tap"して情報を観測することができる。タップするポイントはリアルタイムでも、時間を遡っても構わない。beamの内容は永遠に保存されるので、インターネット上の全情報はbeamの中に保存されることになる。ブックマークもe-mailもbeamの一種。もちろん文書情報だけではなく、あらゆるセンサー情報の流れもbeamであり、人の一生もbeamになる(information lifeと呼んでいる)。

RSSなどのフィード情報とも関連する考え方だが、情報空間の中心に「時間」を据えて、情報の内容、構造やリンクなどはすべてそれの付随物とする、というのはGelernterらしいアプローチだと思う。GelernterのLifestreamは、文書をすべて時間軸上で一元的に管理するという「超整理」的な発想であった。私自身も影響を受けて、Time-machine computingという、任意の時間に逆行できる情報空間やUIを約10年ほどまえに研究していたことがある。一方、Mirrorworlds は、実世界と「鏡」の関係にある情報空間がサイバースペース上にできる、という発想である。WorldbeamはLifestreamsとMirroworldsの両者を統合した考え方といえるかもしれない。

そう考えていくと、TwitterとWorldbeamは発想的にとても共通している。また、Twitterではすべてが単一の時間を中心に構成されているが、その「時間」は必ずしもリアルタイムに限られていない。実際、Twitterの流れを遡って読んでいくことは日常的に行われていると思う。Twitterを介してコミュニケーションしているときでも、微妙に時間がずれていたり(リアルタイムだったりそうでなかったり)する。これはチャットのように全員が同じ時間を強制されるのとはずいぶん違う感覚だ。また、時間の流れを「検索」するなど、現実世界の時間では不可能な機能がとりこまれている。さらに、センサーなどの情報をtwitterに取り込もうという動きはあちこちで同時多発的に発生している。これらの特徴はWorldbeamにおけるbeamやtapの概念に近い。

つまり、Twitterの本質は、beamのような、ネット上でのみ可能な新しい「時間の形態」を作り出していることではないか。そう考えると、かなり抽象的ではあるがmixiなどの他のサービスとの根源的なちがいがわかってくるのではないだろうか。

参考資料

Worldbeamについては以下の"The Next Fifty Years"にGelernter自身の論考が収録されている(David Gelernter : "Tapping into the Beam"):

Forbes.comのGelernterの記事: http://www.forbes.com/forbes/2007/0507/156_print.html

またMirrorworldsはこの本。1991年出版だが今読んでも(今だからこそ?)先進的だ。日本語訳があったのだが絶版になってしまったようだ:

Time Machine Computingの発表スライド(ACM UIST 1999)は