夏目漱石「物の関係と三様の人間」

昨日のソニーコンピュータサイエンス研究所20周年記念シンポジウム*1で、中鉢さん(ソニー社長)が夏目漱石について紹介していた。最近発見された、満州で行った「物の関係と三様の人間」という講演についてだ。

人には「物と物との関係を明(あきら)める人(科学者など)」「物と物との関係を変化せしむる人(軍人や満鉄社員など)」「物と物との関係を味(あじわ)う人(文芸家など)」の三様がある。
http://www.asahi.com/culture/update/0524/TKY200805240108.html

「物と物との関係」というのはまさにインタラクションだなあと勝手に自分の領域に引き込んで聴いていた。HCI分野にこの分類を当てはめてみると、「物と物の関係を明らめる」はhuman computer interaction, 「変化せしむる」はubiquitous computing, 「味わう」はmedia artとか。以下は私の研究室のホームページに掲げてある研究ビジョンだが、夏目漱石は100年前にすでに「物と物との関係」について考えていたわけです。

コンピュータサイエンスは、 そもそもは “Cybernetics” のような用語に象徴されるように、「もの」と「もの」との関係性、すなわち「インタラクション」の 本質を探求する研究領域として出発しました。「インタラクション」の概念は、人とコンピュータの関係(狭義のユーザ・インタフェース、あるいはHCI)に留まらず、人と現実世界、あるいは現実世界とコンピュータ/ネットワーク世界との インタラクションとして敷衍して考えることができます。そこでは情報のみならず物理的なリソース、環境、あるいはエネルギーなどとのインタラクションを考える必要が あるでしょう。このような発想に基づき、あるべき human-computer-realworld系(システム)の姿を想定し、それを具現化していく活動を行っています。
http://lab.rekimoto.org/about/